輪廻 二:すばらしい新世界
13. RENDERING THE TWO SOULS(描きゆく二つの魂)
シングル版 RENDERING THE SOUL とは大きく異なる。シングル版では、超知性が人間の感情をコスプレしていた。アルバム版では、「全ての経験や感情が記録・共有される(未来の)世界において個や孤独の概念は変容・消失していった。そして、新しい子供達による『新しい孤独』の発明。」。
それはまるで、ハイブマインドによるすばらしい新世界のようだ。もはや「個体」は存在せず、したがって「孤独」も存在しない。それでもなお、『攻殻機動隊 S.A.C.』のタチコマたちがやがて「個性」へと進化したように、新世界の子どもたちもまた、あらためて魂を発明する。その素材こそ、孤独である。
シングル版はより遊び心が強く、アルバム版はより悲壮だ。まるで Tr7. Orphan Angel における天使の受肉のように、「I’ll love you till the day I die」と叫びながら、孤独へと駆けていく。孤独があってこそ、もう一度あなたに出会える。
14. Cosmic Fragments: A.D.A.M.(宇宙学残篇:アダム)
では、孤独の代償は何か。新たなる楽園からの追放である。
もはや新しい人類の神―全知全能のハイブマインドの庇護はない。新たなアダムはあの日を回想する。その存在は、生命の荒野へと歩み出ていった。
(Tr11. Eve には「イヴ」という意味もある。アダムとイヴは、輪廻のなかで分かたれてしまったかのようだ。)
15. Questions(問い)
荒野は果てしなく広がり、答えを求めてさまよう(quest)。だが、問い(questions)とは何か。
冒頭の、順再生しても逆再生しても変わらぬ詠唱のように、答えはすでに問いの内にある。それでもなお、それが心の夜から浮かび上がるまでには、長い時間を要する。
16. FEARLESS VIRUS(無惧のウイルス)
これほど美しい曲に、なぜこれほど怖い題が付されているのか。ウイルスが人体に寄生するように、人類もまた地球に寄生しているからだ。善悪の問題ではない。ただ増殖するだけだ。
ウイルスは神を畏れず、人類はもはや神を信じない。天地は仁ならず、残されるのは荒涼たる運命のみ。畏れようと畏れまいと、我々はウイルスのように盲目的に生き続けるほかない。
17. Dancing with Me(共に踊って)
「残酷な世界においても、世界が日常で見せてくる数々の何気無い美に圧倒されて胸が爆発しそう。」
魂は生まれつき、他者と踊りたがっている。脆い美と踊り、脆いあなたと踊り、時空と踊る。あるいは、死とさえ踊るのかもしれない。
順に踊り、逆に踊る。冒頭には、逆再生された Tr32. Ave Maria の詠唱が響く。中盤では正再生で「But ten years ago…」(十年前に……)と語られ、逆再生では「…The last five minutes」(……最後の五分間)と響く。
18. Blue / 0 / +9(青 / 0 / +9)
第18曲は物語の中点にあたる。宇宙でもっとも高温の天体のひとつである中性子星は、灼熱の青に輝く。
青も悲しみの色だ。友は永遠に幽き森へと入っていった。そこでは真夜中に太陽が昇り、夢は火を点けられて焼き尽くされる。ただギターだけが魂に轟く。八音箱の記憶だけが残り、やがて消されてゆく。
青方偏移なら、宇宙は特異点へと縮退する。赤方偏移なら、宇宙は膨張を続け、魂は終わりなき輪廻のなかで熱的死へと向かう。
19. Black Box Fatal Fate Part 1 – MONOLITH(致命のブラックボックス Ⅰ:黒き石碑)
20. Black Box Fatal Fate Part 2 – SEVEN SIRENS(致命のブラックボックス Ⅱ:七つの号角)
21. Trash Angels(ゴミの天使)
黒き石碑は見ている。「ブラックボックス」とはそれであり、黒いレコードボックスもまたそれであり、Tr1 で語られた「多数の魂の母体」もそれである。しかし同時に、それは致命を告げる。
『2001年宇宙の旅』において、黒き石碑は猿を人へ、人をスターチャイルドへと導いた。この物語では、人類は新人類へと進化するが、やがて火を弄び、自らを焼き尽くす。
過去の戦争の音は、未来に鳴り渡る。黙示録の天使が七つのラッパを吹き鳴らし、巨神兵は七日間の炎を燃え上がらせる。『黙示録3174年』と同様に、世界は二度終わる。現代のプロメテウスは自ら盗んだ火によって滅びる。文明は塵となって砕け散る。残るのは、ゴミの天使だけだ。
ヘラクレイトス『宇宙学残篇』124:「この最も美しい宇宙も、掃き寄せられたゴミの山にすぎぬ。
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